リハーサルの様子を先にお伝えしていたとおり、GON and The Family Soul(以下GFS)のライヴが2018年3月24日に終了した。GON TAKAHASHIさんの個人的なプロジェクトに私が参加することになった経緯は、これまでに何度かこのログに書いているので重複を避ける。
このバンドに参加することによる個人的な収穫は、第一義としては「GONさんの手足になる喜び」である。左様、私はアーティストとしてのGONさんを尊敬している。彼の出すCUE(きっかけ)で曲が進行させていくバンドのワンピースになれる喜びは、実は得難いものだ。譜面に書き起こせない音楽をやるバンドとしては、GONさんの意志に対してそれなりに忠実に演奏できたと思っている。もっともこれは服部個人の力で実現したのではなく、同じ意識を持った手練れのミュージシャンズが、同じベクトルで演奏したからだ。おーみさん、くどちゃんさん、おーたくん、かっちゃんさん、服部がGONさんを結び目に機能するのがGSFである。
GFSの音楽は、ジェームズ・ブラウンなどに代表される古いタイプのファンクミュージックである。この音楽への理解があるミュージシャンであれば、誰でも格好はつく。逆に言うとミュージシャンとして技術的な挑戦は少ない。だから2018年の今、私の周囲を見渡してもこういう音楽を真摯にやっているバンドはほとんどない。いや、はっきり言おう。そんなバンドは私は知らない。どうしたって技術的だったり音楽的に挑戦する要素を作りたくなるのだ、向上心のあるミュージシャンならば。だからコード進行(とすら言いづらい)がI度とⅣ度しかない単純な音楽に没頭するには理由が必要なのだ。
GONさんは、そういう手練れのミュージシャンズに対して、コードがふたつしかない音楽の「演奏する理由」を提示できる人だ。GONさんがフロントで即興に近いヴォーカルパフォーマンス(時にはキーボードも演奏)を繰り広げ、CUEでブリッジに行く。ブリッジでこれまた自由にやったあと、やはりGONさんのCUEで元のパターンに戻る。曲の理解の仕方としてはこの上なく単純で、下手をしたら演奏に没頭すること自体が難しいほどのシンプルさだが、バンド全体が意志を持っているように演奏するための「理由」がはっきりしているので、迷い無く一直線に演奏できる。
今回のセット。
上段:KORG POLY-61、下段:YAMAHA S90XS
POLY-61用にギター用マルチエフェクターBOSS ME-70
経験を積んだミュージシャンが音楽に没頭できるほどの「演奏する理由」を提示できる人は、実は多くない。個人的な収穫としては、実はこのことを理解できたことの方が大きい。「バンドリーダーが務まる/務まらない」は、人を使ってでもその音楽を成立させたい!という動機と、理由の提示力で分かれてしまうのだ。
GFSは、だからとても得難い体験ができる場だ。もっとリハーサルと本番を重ねれば、このシンプルな音楽のさらなる深部まで行けるという確信がある。GONさんの持ち歌「FUNK マルカン」をマルカンビルで演奏するというミラクルを体験してしまい、本人の中ではモチベーションを再発見しなければならなくなったようだが、私にとっては「オールドスクールファンクの探求」だけでも充分なモチベーションになり得る。いっしょに演奏してくれたメンバー諸氏に、そしてバンドを脇から支えてくれた関係者に大いに感謝する。イベント主催者にも感謝申し上げる。そして誰よりも、マルカンビル1Fであの日「ナポリカッツァ!」と連呼してくれた観客の皆様に大大大感謝である。
GON and The Family Soul 2018
L to R:服部、おーたくん(Bs)、おーみさん(Gt)、くどちゃんさん(Dr)、Mr.GON、かっちゃんさん(Per)