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2024年、大崎市での演奏から

大崎市内の中高生や市民バンドのみなさんとの演奏機会をいただいた。こういう時じゃないと気が付かないことがある

· 音楽雑感,ライヴ
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様々なご縁と偶然が重なって、2024年は中学生・高校生と演奏する機会を何度かいただいた。Northeast Japan Music ChannelというYouTubeチャンネルでの演奏動画後押しになったのだろう。演奏の現場に招かれたのはそのYouTubeチャンネルで演奏した服部暁典トリオと、仙台を中心に日本全国で演奏活動を続けるSonido del Vientoさんのふたつのグループだった。

……と書くのも白々しい。Sonidoのおふたりは以前からの友人だし、なんならSonidoさんのファーストアルバムをレコーディングしミックスしたのは自分なのだ。旧知の仲と言って良い。だから今回の楽屋はたいへん楽しい時間だった。

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5月に初めて合同演奏を体験し、9月の「第32回宮城県高等学校文化連盟大崎支部総合文化祭」、10月の大崎市立岩出山中学校の文化祭と計3回。大崎市内の中・高校の吹奏楽部と古川工業高校吹奏楽部、そしておおさき吹奏楽団のメンバーとの合同演奏である。内容は毎回微妙に違うが、ジャズスタンダード1曲に我々2バンドの持ち曲。加えて9月と10月はせっかくの機会を逃さず、それぞれのオリジナル曲を1曲ずつ全員で演奏してみた。

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2024年月19日大崎市立中学校部活動合同練習成果発表会(at 大崎市役所屋内広場パタ崎さん家

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服部の機材全景。Nord electro73Dは9月のステージが初戦だった。独特のPA抜けの良さが光る

我々「ゲスト」の楽しい内情はともかく、中高生といっしょに演奏する機会がまさか自分にやってくるとは。実は少々楽しみに思い、また意気込んでいた。私は自分の技術や発想、考え方を人に教えることは得意ではないが、もし生徒たちから音楽上のお悩み相談などがあれば、真摯に対応したいと思っていた。

だがそんな簡単な話ではなかった。

圧倒的に時間不足だった。生徒たちにしてみれば自分の親よりも年上の、それもミュージシャンなどという得体の知れない人間に、普段の自分の演奏のあれこれを相談するなんて発想は持てなくて当然だと思う。せめて定期的に彼らと接する機会があればまた話は別かもしれないが、それには月イチのセッション(実際に音を出すという意味よりも単なる顔合わせでよい)を1年くらい続けなければそういう空気にはならないと思う。加えて誰かに教わりたいと思うのは相当自己鍛練を積んだ人で、日々の部活でそのレベルに達する人も稀だろう。第一自分が高校生の時、たまに「外部講師」の方に指導していただく機会があったが、面倒くさくて仕方なかった。酷い(笑)。今なら千載一遇のチャンスとて質問攻めにするところだが……。当時の自分が必要以上に天狗になっていたということを差し引いても、年上の専門家と子どもが対峙するのは心理的なハードルが高い。

そもそも自分に指導なんてことができるわけがないのだから、もしそんな機会が与えられたとしてもこちらの意気込みなど上滑りになっていただろう。夢を見るのは寝ている時だけにしろという話だ。

それでも10月の最後のリハーサル時、演奏する曲の構成をどう捉えるかという話をしてみた。指揮者から「服部さんから何かお言葉、ありませんか?」と振られたので、自分なりにがんばってみたのだ。5月には「イパネマの娘」、9、10月は「ブルースエット(ブルーゼットと発音していたけど)」という2曲のスタンダードに彼らは挑んでいた。このブルースエットの吹奏楽用アレンジが、率直に言えばソロ中心のやや冗長なもので、ジャススタンダードなど普段聴かない人は、どのように音楽を作って行けば良いのかわかりにくいだろうと思った。そこでジャズという音楽スタイルの基本(テーマ→アドリブ→テーマ)を説明した。「なんでこんなに同じコード進行が何度も出てくるんだ??」と思っている子もいるだろうから。ガチアレンジが施された曲は、譜面どおりに演奏すれば形にはなるが、自分の演奏する音がそのアレンジ中でどういう意味を持つか理解する力には個人差がある。ボサノバというスタイルの特徴としてテンションを多用したハーモニーがあって、単音で演奏するみなさんの場合「なんでここにこの音?」というものもあるかもしれないけど、全体の響きには大きな意味を持っているので、自信を持って音を出してね、とか。

そんなこと本番の1週間前に言われてどれだけ理解の助けになるだろうか。だが10月19日の今シリーズ最後の合同演奏では、彼らはリハーサル時とは見違えるようなきらびやかな演奏をして見事だった。私の解説めいた「指導」とやらが奏功したとは思えない。彼らは自分自身で演奏のクオリティを上げたのだ。素晴らしい。Sonido del Vientoと服部暁典トリオの演奏も、こなれつつも彼らの演奏に対して恥ずかしくない音になっていたはずだ。良い演奏ができて良かった。

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Sonidoのおふたりと合同リハーサル。こういうのも初めて

今回のシリーズ演奏に関わった全関係者に感謝したい。特にきっかけを与えてくださったMS先生には足を向けて寝られない。いっしょに演奏してくれた大崎市内の中学生、高校生、おおさき吹奏楽団のメンバーのみなさんにも感謝。また機会があればぜひ演奏したいです。服部暁典トリオのメンバー、及川文和、田村滋の両名にも感謝。改めてこのバンドでやってみたいことが明確になった。いろいろ試してみたい。ということで何よりも自分自身の勉強になった。精進いたします。

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L to R 田村滋(Bs) 及川文和(Dr) 私、前列美人ふたりはSonido del Viento まりん(Quena,Vo他)、山本さとみ(Key) 敬称略

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個人情報保護の観点からすっきりしない画像でお送りします