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SSL SSL 2+導入記1

レコーディングミキサーの名門がリリースした超安価なオーディオインターフェイスの導入記

· 機材
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少し時間が経ってしまったが、オーディオインターフェイス兼モニターコントローラーSSL SSL 2+導入の報告をしたい。本稿ではバイヤーズガイドではなく、マイクプリ、モニターの音質などについてと、MacOS上で複数のオーディオインターフェイスと組み合わせて使用する際に苦労した話を書く。

機材の詳細はこちらをご覧いただきたい。

最初にセッティングを終えて
ハードウェアとしての出来はすばらしい。各ボリュームを回す際の抵抗感などはたしかにSSLクオリティだ。このつまみを回すためだけにトラックボールの隣に置いておいてもいい。もちろんボリュームカーブもリニアでストレスがない。

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音質について
モニターコントローラーの機能はシンプルで、USB経由でコンピューターから降りてきたデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する。デジタルドメインでDAWなどのボリューム情報を操作することはできない。デジタルコントロールサーフェスではないのだ。D/A変換の品質は酷くはないが「原音に忠実」でもない。中高域にやや癖のある音質で、生音中心の素材のミックスには不向きだろう。

マイクプリアンプの音質もモニター回路と大同小異だ。美点を挙げるなら、音質ではなく余裕たっぷりのヘッドルームと答える。試してみたソースはSHURE SM58、BETA57という2本のダイナミックマイクとAKG C-3000、audiotechnica AT-4040という2本のコンデンサーマイク。ラインレベルではパッシブ回路のギターとベース、もう1台のオーディオインターフェイスであるMetric Halo 2882のステレオアウトを入力して試してみた。お分かりのようにレベルの低い繊細なものから、安定して高い出力のものまでバラエティに富んでいるが、SSL 2+は余裕で受け止める。Hi-Zスイッチを搭載しているとはいえ、ギターもベースもクリップレベルまで持ち上げることができる。そうなるとダイナミックマイクの信号増幅など余裕で、デスクトップ型の筐体の利点でケーブルの抜き差しが容易なことから、ついついSSL 2+にあれこれつなぎたくなる。

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数万円で購入できるインターフェイスのマイクプリの音質としては望外のしなやかな音で、同価格帯の同種製品と比べるとあきらかにローノイズであり解像度も高い。ただし500-800Hzあたりを微妙に強調しているような演出は感じられる。こういう音は音源単体でチェックしている分には盛り上がるのだが、オケに混ぜると吉凶が分かれる。その演出が著しいのがセールスポイントの4Kスイッチで、これをONにした時の、SSLが言うところの「音楽的に前に出る高音域」は、まさに諸刃の剣と言える。特に安価なコンデンサーマイクと4Kを組み合わせると、単にハイが粗い音になってしまう。実際のSL4000E/G両シリーズのマイクプリの音質は、単にハイが強調された軽率なものではなく、たっぷりある中域に負けないくらい高音域も充実しているというのが実態だろう。チェックのために数回使ったきりで、4Kスイッチのランプは消灯したままだ。

使用して数か月の印象をまとめると、フィジカル面(ボリュームの抵抗やアクセスしやすいマイクプリのレセプタクルなど)は値段以上の「使用する歓び」があり、一方音質面ではオールマイティの頼れるヤツではなく、「適材適所」を念頭に注意深く使え、ということになる。

次回、他のオーディオインターフェイスとの共存で苦労した話。お楽しみに!